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評者◆秋竜山
本当に海水は塩っぱいのか、の巻
No.3483 ・ 2021年02月13日




■海に向かって、「オーイ!!」と、叫んでみる。呼びかけてみると、いったほうがいいかもしれない。海に向かって、とは魚たちに向かってということになるのである。それに対して、海はもちろん返事をかえさないが、海の中の魚たちも返事をしない。「オーイ、魚たちよ。海面から頭を出してみてくれたまえ、顔を見せてくれたまえ、全身で、海面たかく飛びはねて見せてくれたまえ」と、叫んだところで海からは何の返答もないのである。海を見ていつも思うことは、海からその中にすんでいる生物が姿をのぞかせないことである。そのことについて、海の専門家は何と答えてくれるだろうか。「いやだ!! からだ」も答えの一つになるだろうが、そのことすら答えてくれないのだ。よっぽど陸というか陸にいる生物をきらっているものかしら。海から頭でものぞかせようものなら、人間にとっつかまえられて食べられてしまうからなのか。身の安全のためか。
 本川達雄『ウニはすごい バッタもすごい――デザインの生物学』(中公新書、本体八四〇円)では、
 〈陸にまず上がったのは植物である。植物にとって陸は水の入手や姿勢維持という難問はあるものの、水中とは違って光を吸収してしまう水の層がなく、また土があって体を固定できるという利点がある。地上は光を浴びてさかんに光合成するには良い環境なのである。植物に次いで節足動物が上陸して植物を餌とし、さらに四肢動物が上陸して節足動物を餌とした。初期の四肢動物はすべて肉食である。(略)陸の生活と水中とで、どちらが暮らしやすいかを比較してみよう。(略)陸の暮らしは大変なのである。その困難をのりこえて四肢動物は陸へと進出していった。(略)生物の体は、重量でみると半分以上が水でできており、水がなければ生きていけない。水中なら周りにいくらでも水があるが、陸では水の入手が深刻な問題になる。〉(本書より)
 海の水は塩っぱい。子供の頃はハダシで海へ泳ぎにいけるほどのところに住んでいたが、父が海水をくんできて庭で大きなナベで火をたき、熱湯にすると、塩分がとれる。それを海のない地方へ持っていって、いわゆる戦争当時の米交換(物々交換)である。塩を米にかえる。そんな時代があった。海水には塩分がふくまれているから、飲めるわけがない。もちろん子供の頃であったが海水浴などで海の水をたった一口のんだだけで塩分のために呼吸が困難になり息ができなくなってしまう。
 本当に海水は塩っぱいのか、海のない山の学校から、よく生徒が引率されてきた。そして海辺に生徒たちを並べて、先生が、「では、これから海水が本当に塩っぱいかどうか飲んでみよう。その前にいっておくが、海水は飲むと塩分のために息ができなくなってしまい死んでしまうおそれがあるから、けっして飲んではいけない。ちょっと、なめるだけだぞ。ちょっとなめただけでも塩っぱいから、わかったね!! では、ハイ、なめて」。その声とともに生徒たちは海水をなめて、「へーッ本当に塩っぱいや」と、かん声をあげた。それを見て海の子供たちは、笑ったものであった。海水をビンにつめて家へ持ち帰った。家のものに海水の味を知ってもらうためである。海水に住む生物、特に魚たちは、塩分のある海水にたえているのか。それよりも魚は塩分がないとすぐ死んでしまった。海水は魚のために塩分があるのか。それ以前から塩っぱかったのか。







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