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評者◆秋竜山
タコの存在そのものがマンガ、の巻
No.3484 ・ 2021年02月20日




■本物のタヌキよりも、マンガのタヌキのほうが、よりタヌキにみえる。キツネもそーだ。タコやイカもそーだ。特にタコなどマンガのタコは本物以上にタコである。タコ八、イカ十という。タコの足は八本であり、イカが十本。タコ八というが、タコには八本の足というより、手が二本あるわけだ。と、なるとタコの足は六本ということになる。イカも十本の足というより足は八本ということになる。二本が手ということだ。タコの頭をいきなりポカリとやると、とっさに二本の足が叩かれた部分をおさえる。それは足ではなく手であるという。イカも同じことがいえるだろう。十本の足だと思っていたら二本の手があると、その時知らされるのである。いくらなんでもタコもイカも、「イタイ」と、いって二本の足を持っていくこともあるまい。タコがフンドシをする時、イカがフンドシをしめる時、そのフンドシをしたところがまたであるという。イカは十本の中でも二本だけ他の足よりも長いのがあるが、それが足なのか手なのか。イカ自身にフンドシをしめさせると一番よくわかるだろう。
 本川達雄『ウニはすごい バッタもすごい――デザインの生物学』(中公新書、本体八四〇円)では、
 〈殻の退化した軟体動物としておなじみのものは、イカやタコだろう。これは頭足類である。(略)足は頭の下に移動しただけではなく、それまでは前後に広がっていた一枚の幅広い形状だったものが、分かれて、頭から下側にのびる複数の腕(触手)となり、口のまわりを触手が取り囲む形になった。触手はイカのように五対(一〇本)が基本であり、タコでは一対が失われ、オウムガイでは腕がふえて四八~六〇本になもなった(雄雌で数が異なる)。〉(本書より)
 タコはイカにくらべて絶大なる人気がある。タコの存在そのものがマンガである。タコというと、その笑いはすべてといってよいほど差別的である。しかし、にくめない笑いだろう。とはいえ、「この、タコが」と、他人にいわれると腹がたつものだろう。「この、イカが」というのは聞いたことがない。タコのマンガなどで色づけされたものは必ず真っ赤だ。実際は、ゆであがったタコが真っ赤になるのだ。真っ赤のタコは、いかにもタコらしいが、タイなどもそうだ。真っ赤なタイなどいるわけがないが、真っ赤に色をつけるとタイらしくなってくるからだ。
 〈タコは蛸壺を好むように、身を隠して襲うハンターであり、高い知能や、まわりの物に色も似せる能力の助けもあって、殻がなくてもやっていけるのだろう。タコもイカも墨を吐くという体を守る手段はもっている。タコは墨で煙幕をはり、イカは墨の塊を吐いて自身はさっと逃げて体を透明にする。こうしてダミーである墨の方に捕食者が気をとられている間に逃げのびる。〉(本書より)
 子供の頃は海で泳いでいると、海中でタコと出合うことはしばしばあった。つかまえるとタコは足でからみつく。大きなタコになると怖くもなった。からみついた所に吸盤のあとで丸くまるで血を吸われたようになる。そんな時はあわてず、おちついてすぐさまタコの頭をひっくりかえすことだ。タコは頭をひっくりかえされ裏側の頭になると、とたんに戦力を失ってしまう。タコは食べるとしたら、足だろう。イカは耳だろうと、子供の頃のガキ友達で観光ホテルで板長をやっている者の一言で、「俺もそー思う」と、全員一致で文句なしでそーなった。あらためてイカの耳を食べてみると、たしかにそんな気もしてくるのである。







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