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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」⑧
No.3496 ・ 2021年05月22日




■もはや“寝言”を通り越して、エイリアンが唱える“呪文”の域に入っている。安倍前総理が三月末に新潟で行った講演での憲法改正と“自衛隊違憲”発言のことである。「命懸けのスクランブルのために、自衛官の諸君が飛んでいく。その横には、自衛隊は憲法違反という立て看板が立てられている。その状況に終止符を打つことは、私たちの責任ではないか」というのが、その発言趣旨だ。
 ところでひとつ訊きたい。スクランブルで緊急発進していく航空自衛隊の戦闘機をみて、いったい誰が「憲法違反!」だと思うのだろうか? 疑問はもっとある。地震や津波、豪雨災害などで被災現場に出動し、懸命な救助活動にあたる自衛官たちの姿をみて、それを「憲法違反!」だといったい誰が思うだろうか? それともこの人は、戦闘機で発進する自衛官は命を懸けているが、災害出動する自衛官は命を懸けていないとでも言いたいのだろうか。
 およそ誰もが考えてもいないような例え話を持ちだして、「自衛隊は憲法違反」だと最も声高に叫んでいるのは、じつは自分自身だということにこの人は気づいていない。この人はとにかく、憲法条文に「自衛隊」の三文字を書き込みたくて仕方がないのである。
 安保法制をめぐる議論が沸騰していた二〇一五年当時、平和を旗印にしてきた連立与党の幹部が、あるTV番組で安倍流の「憲法改正」に明確に反対表明しない理由を問われたとき、困った顔をして「安倍さんがやりたいって言ってるから……」とボソッと口にしたのを忘れない。「アベ政治」の病原ウイルスぶりが異常な“忖度”を旨とする行政の歪曲にあることは周知だが、国家の最高法規たる憲法までもが“忖度”によって改悪されたのでは堪らないと、その時つよく思った。
 コロナ禍で敵前逃亡も同然に総理の座を投げうったかと思ったら、いまだこうして自己流の“憲法改正”をぶち上げているとはあきれ果てたものである。この男にだけは絶対負けるわけにはいかない!
(つづく)







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