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評者◆小嵐九八郎
身心を削られる悲しみを――「現代詩手帖 7月号」(本体一三〇〇円、思潮社)
No.3509 ・ 2021年08月28日




■全国紙の夕刊が儲からず苦戦しているらしいが、「朝日」「毎日」が文化の匂いを振りかけた芸能誌やスポーツ新聞に似てきて、「読売」が中身はともかく硬いテーマで踏ん張り、「東京」も危ういとしても青少年を何とか歴史の面白さに引き込もうとして「歴史トラベル」の漫画や例によって文学に辛うじて切り込んできた匿名コラムの「大波小波」で活字の危機と対峙している。
 その7月8日の「東京」のコラム「抒情詩の復活を」のタイトルに惹かれて読んだ。当方は自称歌人だが、短歌も俳句も川柳も狂歌も、親分、おっと兄貴分、いいや大地は自由律の詩と思っている。ただ、短歌を作り出したのは刑務所での作業中、自由律の詩は自分で作って自分で覚え切れずに舎房に帰り、忘れてしまうので、短くリズムを刻み易い短歌になった。娑婆に出てきて短歌・俳句などを定型詩と呼ぶと知り、そろそろ四十歳になる頃で、どこかの国の王様に従うような“定型”の命名にハッとなり、悄気、なお悄気続けている。
 この「抒情詩の復活を」のコラムでは、「現代詩手帖」7月号を標的にして、渡辺武信の詩と、アンケートの論について、入沢康夫とそのエピゴーネンの抒情詩一般を否定している、と評価している。
 へえ、現代詩は抒情詩否定派が大きな流れなんだと「現代詩手帖」7月号を買い求め、ついでに「詩と思想」も買った。「現代詩手帖」の巻頭詩は“権威ある新聞”が気に入っているらしい谷川俊太郎の、正直に告げて、抒情も感動も何もない、読み手不在の、自慰以前の詩。せめて童謡の『雨降りお月』の野口雨情の詩、原爆の言葉の一言も出ないが悲しみの満ちた流行歌『長崎の鐘』のサトウハチローの詩、同じく『津軽海峡・冬景色』(だけではないが)の阿久悠の詩を純な気持ちで学んで欲しいもの。曲と歌い手つきの負を感じるのなら、石川啄木の『ココアのひと匙』を。ま、白石かずこの「奈緒美」は肉親の歯の悲しみが確とあった。「詩と思想」も“思想”が泣く詩ばかり。
 現代詩が厳しいのは言葉の難解さにあるのでなく、直截的な感動、社会や不正への憤怒、身心を削られる悲しみを避けてきたことにある。つまり、社会で必死に、好い加減に、楽しく生きる人人を抜かしている点だろう。







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