書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります
評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」⑬
No.3515 ・ 2021年10月16日




■いうまでもないが、権力悪と権力犯罪とはまったく違う。前者は、権力の行使によって不可抗的に生み出される不正義をさすのに対して、後者は権力者がみずからの権力を行使して罪悪をなすことだからである。権力犯罪は権力者じしんの明確な意思によって動機づけられるものであり、その罪過はあくまで権力者本人にのみ存する。
 仮にも権力犯罪が疑われるような事案においては、それが刑事であるか民事であるかを問わず、あるいは起訴案件か不起訴案件かを問わず、その法的責任のみならず道義的責任の所在をも含めて、疑惑の当人は国会や社会に対し広く説明責任を負う。そして、すでに周知の通り、数々の疑惑を告発されながら、まったく不十分なかたちでしか説明責任を全うせず、嘘と隠蔽とすり替えと証拠の改ざんというまさに“犯罪的”行為によって、権力の座に居座り続けたのが、安倍前総理である。
 そんな疑惑を引きずった状態のままで、あろうことか疑惑の本人が今回の自民党総裁選で、特定の人物の擁立とその選挙結果に多大な影響力を及ぼした。そのことだけを切り取っても、この国の政治風土の醜怪さ、いや権力そのものの自浄作用の決壊が、私にはこれ以上ない明白なかたちで暴露されたことに唖然とするばかりだ。
 自民党内の派閥の力学にはもとより何の関心もない。万が一、安倍氏と対立関係にある候補が総裁選に勝利していれば、あるいは彼の党内での影響力は削がれていくことになったのかもしれない。それ自体は喜ばしいことだとしても、問題の本質はそのようなところにはない。所属政党のコップのなかで、誰彼の求心力が高まろうが地に落ちようが、知ったことではないのだ。
 そうではなく、権力犯罪を疑われる渦中の人物が、その責任を追及されることもなく、いまだにのうのうと政権党の重要な舵取りに介入し続けていることが、何よりも深刻な問題なのだ。この事態を放置するなら、間違いなく彼らは国全体の舵取りを誤ることになる。
(つづく)







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約