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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」⑮
No.3523 ・ 2021年12月11日




■政治中枢で権力の交代がおこるとき、それを最も核心において支配する原理とはなにか? 表向きはどのように見えようとも、〈裏切り〉と〈粛清〉以外には何もないと私は思っている。理屈ではなく、これは経験的な直感として、である。理由は簡単だ。同志への〈裏切り〉がなければ権力の奪取は不可能であり、またライバルの〈粛清〉がなければ奪取した権力の維持は困難だからである。党員や派閥間のすべての野合や対立は、中枢のこうした力学動向の周縁でおこる副次的な反作用にすぎない。
 今年、政権与党の総理総裁が交代したことは、記憶に新しい。そして、外目にはどのように映ろうとも、現在、水面下で進行しているのは、新政権による旧政権への〈裏切り〉と〈粛清〉以外ではない。前者の兆候はまずその人事面において露呈し、後者のそれはその政策面において具現化されようとしている。「アベ政治」と私がこれまで呼んできた、もはや政治の態をなさない児戯的痴呆症状の悪党統治が、こうして此の世から消滅していくならば、決して悪いこととは思わないが、それでもまだ不全感はそうとう根強い。
 政治家が権力闘争でトップを目指すのは、自分の勝負すべき場所をそこに狙い定めているからであり、政治家である以上、そのこと自体は至極あたりまえな行動習性でしかない。つまり、それに勝ったからと云って偉いわけでも何でもなく、彼が本当になすべきことは、さらにその先にある。第一級の政治家であろうとするなら、そして本気で国の舵取りに臨もうとするなら、「アベ政治」が詐欺的手法をつかい放題につかって、長きにわたり脈々と築いてきた制度的ガラクタを、ひとつずつ命がけで破壊することを旨としなければならない。それができなければ、その者は「アベ政治」の泡沫的継承者の地位に止まるしかないだろう。
 蛇が蛇をのむ動画をみたことがある。政治の世界も生臭い蛇の道である。蛇になりきれた者にしか、蛇を呑むことはできないのだ。
(つづく)







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