書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります
評者◆秋竜山
文通仲間という存在、の巻
No.3553 ・ 2022年07月30日




■昔からの友達は、なつかしいものである。年賀状を整理していたら、電話番号が書かれてあったから、ひさしぶりに今年の暑さはただごとではないと思い、ごきげんうかがいをかねたものである。熱中症にならないためにも、水を飲むことだ。と、いうと友達は、「俺のほうは大丈夫だ、むしろ、きみのほうが、心配だ!!」といって笑った。「ぼくのほうはしんぱいない。きみのほうがしんぱいだから電話したんだい」と、いうと、お互いに水をのもうといいあった。それでも心配だと、いいあい、とにかく水を飲もう、水さえのんでいれば文句なしだ。と、何度もいいあい長電話になってしまった。元来、私は、電話ぎらいで、めったに電話しないのだが、今年は早く梅雨が明けたから、電話ギライなんていっていられない。そして、長電話になってしまったのである。
 話の中で、「そういえばきみとのつきあいは長いねぇ!!」と、いうことになった。友達が、「長いもんどころのさわぎではない。気の遠くなるような長さだねぇ」と、いった。彼とは気の遠くなるような昔からのつきあいである。たしか、私が十、五六さいの頃だった。彼が、たしか、当時、漫画新聞に文通欄があった。当時は文通をしあうというのが流行していた。今の時代、聞いたこともない。そこにマンガグループをつくろうという記事がのっていた。お互いにマンガ狂の少年たちである。彼の呼びかけに、たしか七、八人返事を書いた。東京在住の人たちばかりではなく、地方からの人もいた。私は伊豆からの同人であった。彼は東京でくらしていたので、伊豆から彼をたずねていったのである。そして、彼の下宿へ泊まった。独身だった彼の部屋は、たしか四じょう半だった。そして、フトンは敷きっぱなしであった。その時、私は、生まれてはじめて、紅茶というものをのんだ。世の中に、こんなおいしいのみ物があったかと感動した。それから数えきれないほど彼のアパートをたずねて、とめてもらった。
 当時、今は無いが「内外タイムス」という新聞が主催する「新人マンガ投稿家仲間の会」へ、Tさんに連れていかれた。全国から大勢の新人マンガ家たちが集った。そこでは、プロの漫画家を一名よんでマンガの話をしていただいたり、マンガを描くにはデッサンがだいじだとモデルをデッサンしたりした。ある時、Tさんから、漫画新聞の文通仲間である、Hさんという女性を紹介された。有楽町駅前の白鳥という喫茶店であった。その時、どのような話をしたのか記憶が定かではないが、楽しいひとときであった。私は彼女にはそれ以外一度もお会いしていなかった。電話のやりとりの中で彼女の話が出た。そして、彼女が結婚したこともわかった。同業者のイラストレーターとのことであった。さらに驚いたことは、その彼女が私のうわさをいつもしているというのであった。もちろん、私はした。おたがいに年とっているが、電話もしなかった。そのことをTさんからきかされたのであった。
 谷泰『笑いの本地、笑いの本願――無知の知のコミュニケーション』(以文社、本体二八〇〇円)では、
 〈男性と女性が喫茶店でやや長話をしていた。そこで女性が次にアポイントがあることを思い出して、チラと腕時計を見て、三時半になろうとしていることに気づき、話を切り上げなくては、と思って、腰を上げつつ、女性‥あゝもうこんな時間!アポイントがあるの。もうお話はこれくらいにしましょう。それにたいして、自分も今日中に銀行で外貨を替えなくてはならないことを思いだした男性が(略)コーヒー代払うよ。〉(本書より)
 有楽町駅前の「白鳥」という喫茶店でHさんとお会いした時、コーヒー代を誰が払ったのか。私でもなくHさんでもなくTさんに決まっている。私が払うべきであった。しかし、サイフの中は、淋しかったなァ……。Tさんゴメンなさい。







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約