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評者◆秋竜山
先に言われる「カンパーイ」、の巻
No.3554 ・ 2022年08月06日




■「あいさつ」ほど、むづかしいものはない。それも、ひとこと集まっているみんなの前で一段たかいところへ立って、「カンパーイ」と、叫ぶ。これも、りっぱな、あいさつのぶるいにはいるだろう。還暦の祝いの席で、みんなに「お前やれよ」と、いわれて私は、喜んでやったわけではない。やらないわけにもいかず、しぶしぶやったというのが本音であった。「私は、では、せんえつながら……」と、いって、一同をみあわせていた。そして、「カンパーイ」と、音を発しようとしたその時、誰かが、「カンパーイ」と、叫んでしまった。私がおんどをとる「カンパーイ」と、叫ぶ前に叫んでしまったのである。
 和田秀樹『「おめでたい人」の思考は現実化する』(小学館新書、本体七六〇円)では、
 〈序章――「おめでた」パワーで蹴散らせ!格差社会〉。
〈第一章――「おめでたい人」とはどんな人か。〉
〈第2章――「いいおめでたさ」と「悪いおめでたさ」〉。
〈第3章――「なぜおめでたい人」は成功するのか」〉。
〈第4章――おめでたい人が知っている「真理」〉。
〈第五章――「おめでたい人になるトレーニング法」〉。
〈終章――「妄想」したもの勝ち!〉(本書より)
 私が、カンパーイ! と、声を発しようとしたその時、誰かが、「カンパーイ」と、叫んでしまった。私が、おんどをとる「カンパーイ」と、叫ぶ前に叫んでしまったのである。さあ、困った。私はどーしたらいいのだ。本書でいっているように、私は「おめでたい人の部類に入るだろう。だからといって、言った相手をせめるわけにもいかないだろう。相手は無言で、まっかな顔をさせて、うつむいていた。本書のいうように、私は「おめでたい人」と、いうことになるのだろう。みんな、大笑いした。私は、頭の中が大こんらんしてしまった。そのことで、みんな二分してしまった。先にいわれてしまった私が悪いという組と、後からいった奴が悪いという組でギロンしあった。どっちも悪いという奴もいたし、いわれてしまったお前は悪くなくて、正しい、とか、どちらも、まちがっている、とかいう奴もでるしまつとなった。
 家に帰って、食事しながら、そのことを妻に話すと、「それは、あんたが悪いにきまっているわよ」と、いった。あなたが正しいとは、いわなかった。一緒に食卓に座っていた父が、「それは、お前が悪い。お前は子供の頃からのろまだから」と、いった。すると母親が「あなた何をいっているのよ、のろまはあなたでしょ」と、いったのであった。すると、長男が、「お父さんが悪いにきまっているでしょ」と、いった。そのことで、結論としては、どっちもどっちということになったのである。そして、最後に全員で大笑いとなったのであった。私は、自分が実に「おめでたい人」であると、思ったのであった。そして、最後に、カンパイしようということになった。「カンパーイ」と、叫ぼうとしたとき、全員に先にいわれてしまったのである。







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