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評者◆添田馨
改憲という亡霊――亡国に至るを知らざれば即ち亡国①
No.3555 ・ 2022年08月13日




■政治目標としての「改憲」なんてものは、そもそも存在しない。日本国憲法は、その第九十六条で“憲法の改正”について記述しているが、その手続きを具体的に定めているだけである。
 ところが、この7月8日に安倍晋三元総理が参院選の街頭演説中に銃撃をうけ死亡した。すると脊髄反射のようにして、安倍氏の悲願だった憲法改正を、その遺志をついでなんとしても成し遂げねばならないといった論調が、政権中枢はじめいろんなところから聞こえてくるようになった。これは大衆を欺罔する、きわめて悪質なプロパガンダという他はない。
 故人の悲願は故人のものであって、憲法改正の要件とは何の関係もない。何の関係もないことを、あたかも関係があるかのように有権者の情動に訴えかけようとするのは、洗脳欺瞞いがいの何物でもない。
 安倍氏が生前に訴えてきたのはいわゆる「押しつけ憲法論」であり、「現行憲法は占領軍が作った。『私たちの憲法』に変える大きなチャンスを迎えようとしている」といった直近の演説内容にもその片鱗がうかがえる。だが、現行憲法が占領下で作られたのは事実だが、それを「占領軍が作った」というのは事実ではないし、明らかに虚偽の情報である。
 こうした間違った認識にもとづく有害情報、それもずっと以前に多くの論者たちによって全否定されたこうした低級なデマが、何ゆえに必要とされたのか。それは、安倍氏のなかで「改憲」という政治目標がさきにあり、その実現にむけて現行憲法を否定してみせる尤もらしい理由が必要とされたからであろう。だが、こうした架空の理由づけによる「改憲」など、そんなものは実体のない亡霊にすぎない。
 憲法のなかで語っているのは「日本国民」の一般意志である。改憲勢力がいうところの「改憲」は、従って、この一般意志そのものの否定を意味する。“改憲の亡霊”たちにそれを絶対に許してはならない。盗られてはならない。“亡国に至るを知らざれば即ち亡国”――私たち「日本国民」は目覚めなくてはならない。
(つづく)







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