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評者◆秋竜山
助けた亀に連れられない、の巻
No.3556 ・ 2022年08月27日




■〽むかしー、むかしー、浦島は、竜宮城へきてみれば、絵にもかけない美しさ……と、いう歌を子供の頃、よくうたってみたものであった。私は漁村育ちであった。陸から一〇〇〇メートル沖合いに定置網が張られて、その網を五せきの船で毎日、朝と夕方に、あげにいく。私も長男ということで家のあとをつぐ意味で、りょうしになった。雨の日も波のうねりの強い日なども休むことなく沖に出た。船よいして、ゲエゲエやった時もあった。網には大亀が一ぴきか二ひき、時々はいっていた。その亀を陸に持ち帰った。陸へつくと、すぐさま神主さまに来ていただいた。漁村には龍宮神社なる神殿が祭られていた。亀は竜宮城のおつかいであり、漁師にとっては、めでたい存在であると、あがめられていた。そんなおめでたい大亀に、おみきといって、一升ビンに入った酒をふるまった。神主さまのお祈りが終わると、酒でフラフラになった大亀を海へ逃がしてやった。その時、大亀はなんといったのか。「アア、酔っぱらって気分がいいわい」と、いったのか、それとも気分がわるくなってしまい、ゲエゲエやりながら海の中へ入っていったのか。漁師たちは、「これで竜宮城へかえって、乙姫さまによろしく伝えてくれ」と、お願いしたつもりだ。大亀に、そのことが伝わったのか、漁師たちは、お祝いした大亀に、これからも大漁になりますようにと、大亀を逃がしてやった。みんな、手をあわせて、おいのりした。若い漁師は海にもぐっていく大亀の背にのって、いっしょに竜宮城へ行くつもりでいるが、大亀は海中にもぐってしまう。背中にのっていた若い漁師は、大亀にもぐられてしまい、ゲエゲエいいながら、口いっぱいにふくんだ海水をはきながら浮かびあがって、それまで手をあわせていた漁師たちは、いっせいに手をたたいて大笑いしたのであった。大亀は海中にもぐって竜宮城へいくどころか、酒のために内臓がただれてしまい、すぐさま死んでしまうのである。それを知っていながらなんともザンコクな漁師たちである。私は、子供の頃、そういう光景を海岸でみて、亀さん、ゴメンなさいと手をあわせたのであった。
 古代ミステリー研究会編『日本の成り立ちが見えてくる 古事記99の謎』(彩図社、本体六四八円)では、
 〈「古事記」を読むと、どこかで聞いたことがあるような物語を目にすることが多い。それもそのはず、日本神話をもとに、日本人なら誰もが知る、数多くの物語が誕生したからだ。その1つが「浦島太郎」だ。「古事記」の山幸彦(以下ヤマサチ)神話には、海に落とした釣針を探すため、ヤマサチが小船に乗って、綿津見の国の神殿に訪れるという箇所がある。神殿で歓待されたヤマサチは、綿津見の娘豊玉昆売(以下トヨタマビメ)を娶り、3年を過ごして地上に戻る。竜宮城を思わせる夢のような神殿だった。〉(本文より)
 浦島太郎で有名なのは、乙姫さまにいただいた玉手箱である。私は若い頃、玉手箱をおそるおそる、あけてみたことがあった。箱の中から白いケムリなど出なかった。もちろん、しらがのおジイさんになることもなかったのである。めでたし、めでたし。







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