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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3569 ・ 2022年12月03日




謎にいざなわれて物語のなかへ
▼ほんとうにあったふしぎな話 ①ミイラのなぞ/②ナスカ地上絵のなぞ/③ヒマラヤの雪男のなぞ
▼桜井信夫文/佐竹美保絵
 あすなろ書房から、装いも新たなシリーズの刊行が始まりました。にわかには信じがたい、世にもふしぎな話を世界中から集めたノンフィクションシリーズ「ほんとうにあったふしぎな話」です。いまから三〇年余り前に出たシリーズですが、新しく絵を描き起こし、文章を改訂しています。読んでも見ても楽しい、絵入りの本格派ノンフィクションなのです。
 第一巻は『ミイラのなぞ』。古代エジプトのミイラの謎を解き明かす物語をはじめ、黄金郷エルドラド、ハーメルンの笛ふき男、オオカミに育てられた子ども、とそれぞれの謎をめぐる話が続きます。第
二巻は『ナスカ地上絵のなぞ』。イースター島巨人像、生きていたタロとジロ、空中都市マチュ・ピチュ、とそれぞれの謎が解き明かされていきます。そして第三巻は『ヒマラヤの雪男のなぞ』。ヒマラヤの雪男、インカの王道、リンカーン暗殺と、しだいに深まる謎解きが読者を引き込んでいきます。
 読者はアンデスの山奥へ、ヒマラヤの峻険な高山へ、古代エジプトへ、中世ドイツへ
と時空間を縦横無尽に旅すし、謎にいざなわれて物語のなかに分け入っていくことでしょう。それだけではありません。歴史や文化や自然の奥深さを知ることができるシリーズでもあるのです。(11・10刊、A5判各八八頁・本体各一五〇〇円・あすなろ書房)


「イソップ絵本」の国際比較がひらく世界
▼イソップ絵本はどこからきたのか――日英仏文化の環流
▼加藤康子・三宅興子・高岡厚子 著
 「イソップ寓話」といえば、動物によるさまざまな寓話で、子どもがなじむ短いお話が展開して続いていきますが、人生のさまざまな難問や悩みなどを織り込んでいて、とても奥が深い物語の世界をもっています。紀元前六世紀にギリシアの奴隷であったイソップが書いたといわれていますが、決して古い昔話ではなく、くりかえし読み継がれ、世界中に伝播して新たに生命を見出されてきた古典にほかなりません。
 この本は、日本、イギリス、フランスのイソップ絵本を比較し、それぞれの国ならではの個性的な絵と文章によって表現された作品を、数多くの図版入りの解説で紹介しています。「イソップ寓話」の世界の歴史と伝播の広がりを伝えてくれます。
 第1部は「イソップ寓話」受容の歴史について論じられています。たとえばイギリスにおける「イソップ寓話」の始まりは、一四八四年に刊行されたカクストンの『イソップ寓話集』にはじまります。この本には木版による挿絵が一八六点も付けられ、まず話のタイトルがあって、話のなかに登場する主な動物がその下に木版で表現され、その後に一話の短いテキストが入れられ、最後に話についての教訓が付け加えられています。この本の「キツネとカラス」や「キツネとツル」を見ると、構図といい表現といい、中世のものとは思えません。絵が木版からエッチングに変わって、動物や環境が細部まで描写され、より立体性が増しますが、それぞれに魅力があって、ずっと図版をたどっていても飽きません。こうして時代が下がり、一九世紀の半ば以降、「イソップ寓話」の底本となったジェイムズ本とタウンゼンド本が登場して、私たちにも馴染みの深いイメージの原型ができあがってきます。子供向けの本や豪華本なども同時に生み出されます。
 こうしたイソップ本の影響は、近代の幕を開けた日本にも及びますが、もとをたどれば室町時代にキリスト教の宣教師が伝え、「伊曽保物語」として刊行されました。第2部では、近代以降の日本の「イソップ絵本」が論じられています。講談社版と小学館版、それぞれに魅力があって甲乙つけがたいですね。また、日本の「イソップ絵本」のなかの、「金の斧、銀の斧」の神さまの姿をどう描いているか、イギリスとフランスの本と比較した考察なども興味深いです。日本風に変化をとげた「イソップ絵本」には、日本独自の文化的な特徴が見えてきます。
 「イソップ寓話」の国際比較の共同研究をもとにした本書を、絵本好きな読者はぜひ手にとってみてください。面白い発見がありますよ(19・5・30刊、B5判二〇二頁・本体三〇〇〇円・三弥井書店)


切り絵で表現されたすてきな夜の物語
▼みんなにっこりくりすます
▼ミーケ・ファン・ホーフト 文/ロンネケ・リーバー イラスト/女子パウロ会 訳
 切り紙や折り紙でつくられた登場人物たちがくりひろげる、二〇二二年の聖夜に読む新たな絵本です。著者のミーケ・ファン・ホーフトはオランダの作家で、イラストを担当したロンネケ・リーバーが、みごとな切り絵で読者の目を楽しませてくれます。動物やマリアさまをはじめ人びとの表情がとてもやさしく繊細に表現されていて、タイトルのとおり「みんなにっこり」。
 「この すてきな あかちゃんは きっと せかいに へいわと あいと ひかりを くださるに ちがいない」。
 今年のクリスマスは、この絵本がたたえる「みんなにっこり」の夜となることでしょう。(8・15刊、二六・六cm×二五・六cm二六頁・本体一一〇〇円・女子パウロ会)


ものわすれの物語になまずが動き出す
▼ものわすれ川の大なまず
▼関沢紀 作/川田じゅん 画
 書名のものわすれ川とは、むかしむかしあるところに流れていた大川の、川中をさして呼ばれた名前だそうです。この川中の近くに、なまず村という名の村があったそうな。ここが物語の舞台ということになります。
 作者の関沢紀さんには『なまず日和』や『なまずの石』という著作がありますが、実際になまずを飼育していたそうです。なまずは夜行性で、昼間はじっとしていますが、長いひげで天変地異を感知します。それだけでなく、人間の悪行も知見すると、関沢さんは書かれています。なまずに詳しい作者が、ここでは新しい世界を見せてくれます。
 現代というのは、ものわすれが激しい世の中です。破局事故と呼ばれた原発震災さえ、すっかり忘れて、再稼働をあたりまえのように推進する政治があります。ものわすれ川とは、利潤追求であり、原発に代表される自然破壊であると書かれています。では、この絵本で大なまずは、どんな動きをするのでしょうか。さあ、物語の世界へと、川の流れに乗るように入っていきましょう。(11・10刊、A4変型判四八頁・本体一八〇〇円・風濤社)


ぼくもおべんとう作りに挑戦してみよう
▼ぼくんちのおべんとう
▼志茂田景樹 作/平田景/絵
 秋も深まる今日このごろ、恰好の行楽シーズンですが、小学生の子どもたちも楽しみにしていた校外学習があります。野外で広げるおべんとうは、また格別な味ですね。
 この絵本は、主人公のぼくが、そんな楽しみなおべんとうをめぐって一喜一憂し、仕事に追われてゆっくりおべんとうを作ることのできないお母さんに代わって、自分でおべんとうをつくってみようと格闘するお話です。
 校外学習のおべんとうは、運動会のときと同じ、生姜焼きべんとう。友だちにもからかわれてしまいました。でも、おかあさんも大変なのがわかっています。そこで、おばあちゃんに作り方を教わって、ぼくもおべんとうをつくってみることに。悪戦苦闘したすえに……。それはそれは、みんなの気持ちや愛情のこもった、みごとなおべんとうができあがります。ぜひとも本をひらいて出来栄えを見てみてね。おべんとうを食べたくなること必定です。(10・15刊、B5判三二頁・本体一五〇〇円・新日本出版社)


地球人として活動する小学生の問い
▼地球をまもるってどんなこと?――小学生のわたしたちにできること
▼ジョージ Y ハリソン 作/たかしまてつを 絵/日本科学未来館(遠藤幸子・池辺靖) 監修
 作者のジョージ Y ハリソンくんは、国連食糧農業機関(FAO)が注目する一〇歳の少年で、持続可能な世界のために世界的に活躍しています。そんなハリソンくんが、自分で考え、調べながら、ベジタリアンの食や生物多様性、フェアトレードなどを実践しようと想像力を羽ばたかせ、問題意識を広げながら、地球を守るために行動する。そんな活動を絵本にしたのがこの本です。
 学校の遠足で訪れた日本科学未来館で、ハリソンくんは情報の大切さを学びました。そしてAIが専門の東京大学教授、松尾豊さんが彼の質問に答えています。世界をよくするために、いっしょに行動する地球人としてできることが、この絵本には盛り込まれています。(10・6刊、B5変型判三二頁・本体一五〇〇円・KADOKAWA)







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