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評者◆添田馨
改憲という亡霊――亡国に至るを知らざれば即ち亡国⑤
No.3569 ・ 2022年12月03日




■11月9日、ウクライナ軍への志願兵とみられる日本人男性の死亡が、確認された。彼を「外国人傭兵」とみるか「日本人義勇兵」と呼ぶかに関わりなく、実際の戦闘行為によって、しかも遠く離れた外国の戦場で一般の日本人が命を落としたことの衝撃はとてつもなく大きい。
 「心配をかけたくないと思ったので連絡していなかったが、誰かの役に立ちたいとウクライナに来ている」――「ドブレ」というニックネームで呼ばれていたという男性本人からの、これが私が確認しえた亡くなる前の唯一の私信である。(朝日新聞デジタル・11月12日(土)20:19「『前線に行かなければ』死亡の日本人志願兵が元同僚に送ったLINE」より)彼の存在を、私たちのこの国はいったいどのように受け止めればよいのだろうか。
 彼は個人としてウクライナの軍隊に志願し、正規兵としてロシアとの戦争に参加した。しかし国籍が日本にある以上、世界のどこにいても彼には日本の法律が適用される。日本国憲法は国としての交戦権を否定しているから、彼の行動はあくまでも私人としての戦闘つまり「私戦」にあたる。だが刑法93条は「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する」というように、「私的な戦闘行為」を明確に禁じているのだ。ならば、彼はただの犯罪者に過ぎないとでもいうのか。
 同じことが、日本の領土内で起こった場合を考えてみよ。純粋にボランタリーな意志によって、私たちが銃を取らねばならぬような安全保障上の危機的状況が、国内で絶対に起こらないとは誰にも言えない。もしそうなった場合、自分たちの大切な存在を守る手立てが、銃を取るいがいに選択の余地がなければ、私たちはそうするのではないだろうか。「誰かの役に立ちたい」との真情からでた決死の覚悟の行為であっても、それは〝犯罪〟なのか。
 私は非戦論者だが彼の「私戦」を否定しない。「ドブレ」と呼ばれた日本人がいたことを私は決して忘れない。
(続く)







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